過去問
2010年宅地建物取引主任者 問題&解答
問1
問01 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 1 土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。
解説:×・・・未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。(民法5条1項より)「売却」という法律行為に該当するために法定代理人の同意は必要です。
- 3 被保佐人については、不動産を売却する場合だけでなく、日用品を購入する場合も保佐人の同意が必要である。
解説:×・・・成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。(民法9条より)
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。 (民法13条より)
- 4 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。
解説:×・・・家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。(民法17条1項より)家庭裁判所の審判で決まる特定の法律行為のみです。
問2
問02 AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。
- 1 Aが死亡した後であっても、BがAの死亡を知らず、かつ、知らないことにつき過失がない場合には、BはAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。
解説:×・・・代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
- 2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
(民法111条より) 本人の死亡により、代理権は消滅する。よってBは、甲土地は、土地を売却することができない。
2 Bが死亡しても、Bの相続人はAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。
解説:×・・・上記の(民法111条より)代理人の死亡は、代理権は、消滅する。
- 3 18歳であるBがAの代理人として甲土地をCに売却した後で、Bが18歳であることをCが知った場合には、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができる。
解説:×・・・代理人は、行為能力者であることを要しない。 (民法102条より)未成年者でも代理行為はできます。
- 4 Bが売主Aの代理人であると同時に買主Dの代理人としてAD間で売買契約を締結しても、あらかじめ、A及びDの承諾を受けていれば、この売買契約は有効である。
解説:○・・・同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。 (民法108条より)
問3
問03 所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 3 時効期間は、時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
解説:○・・・選択肢2の解説の民法162条が時効取得に関する法律ですが、起算点を選択し、その時効の時期を早めたり遅らせたりすることができません。
- 4 通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
解説:○・・・地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。(民法283条より)
問4
問04 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有 権を主張することができる。
解説:×・・・不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(民法177条より)登記する必要があります。
- 2 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有 権を主張することができる。
解説:×・・・詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。(民法96条より)この場合は、CとAの二重譲渡となり、Cは登記がなかれば、所有 権を主張することができません。(判例より)
- 3 Cが時効により甲土地の所有 権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有 権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有 権を主張することができる。
解説:○・・・これはよく出る問題です。取得時効の進行中に第3者の売買契約がなくてもその後、時効が完成した場合は、登記なくても時効による取得を主張できます。
- 4 Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有 権を主張することができない。
解説:×・・・相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
(民法94条1項2項より)Aが善意である場合には、Aは所有権を主張することができます。
問5
問05 AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているのはどれか。
- 2 当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当 権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。
解説:○・・・ 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。(民法304条より)
第三百四条の規定は、抵当権について準用する。(民法372条より)
問6
問06 両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生じる損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 1 債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。
解説:×・・・債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。(民法416条1項より)
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。(民法416条2項より)民法416条1項のように通常生ずべき損害の賠償を目的としています。民法416条2項は、特別の事情の場合です。
- 2 債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものに限り、賠償請求できる。
解説:×・・・選択肢1の民法416条2項には、両当事者ではなく当事者(債務者)と記載されています。
- 3 債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
解説:○・・・消滅時効は、権利行使が可能な時から進行を開始します。つまり本肢の場合は、「本来の債務の履行を請求し得る時から」です。
- 4 債務の不履行に関して債権者に過失があったときでも、債務者から過失相殺する旨の主張がなければ、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を考慮することはできない。
解説:×・・・ 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。(民法418条より)
問7
問07 民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 1 債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。
解説:×・・・債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者代位権を行使することはできません。
- 2 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有 権保全登記手続を行うことができる場合がある。
解説:○・・・判例は、本肢のとおりです。
- 3 建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
解説:○・・・こちらも判例は、本肢のとおりです。
- 4 抵当 権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
解説:○・・・こちらも判例は、本肢のとおりです。
問8
問08 保証に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 1 保証人となるべきものが、主たる債務者と連絡を取らず、同人からの委託を受けないまま債権者に対して保証したとしても、その保証契約は有効に成立する。
解説:○・・・保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。(民法446条より)
- 2 保証人となるべき者が、口頭で明確に特定の債務につき保証する旨の意思表示を債権者に対してすれば、その保証契約は有効に成立する。
解説:×・・・保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。(民法446条2項より)
- 3 連帯保 証ではない場合の保証人は、債権者から債務の履行を請求されても、まず主たる債務者に催告すべき旨を債権者に請求できる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又は行方不明であるときは、この限りではない。
解説:○・・・債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。(民法452条より)
- 4 連帯保 証 人が2人いる場合、連帯保 証 人間に連帯の特約がなくても、連帯保 証 人は各自全額につき保証責任を負う。
解説:○・・・連帯保証人の場合、各自全額につき保証責任を負います。
問9
問09 契約の解除に関する次の1から4までの記述のうり、民法の規定及び下記判決文によれば誤っているものはどれか。
(判決文)
同一当時者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても、それらの目的とするところが相互に密接に関連付けられていて、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
- 1 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされても、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と合わせて乙契約をも解除できるわけではない
解説:○・・・判決文より、両契約を合わせて解除するためには、両契約の目的が相互に密接に関連付けられていること。
- 2 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされた場合、甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り、甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と合わせて乙契約をも解除することができる
解説:×・・・判決文より、社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には、甲契約上の債務の不履行を理由に、その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。「甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り」という場合に限らずにです。
- 3 同一当事者間で甲契約と乙契約がなされ、それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていても、そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるだけでは、乙契約も解除することはできない
解説:○・・・判決文より、甲契約と併せてということなので、甲契約を解除できないと、乙契約も解除することもできない。
- 4 同一当事者間で甲契約(スポーツクラブ会員権契約)と同時に乙契約(リゾートマンションの区分所有 権の売買)が締結された場合に、甲契約の内容たる屋内プールの完成及び供用に遅延があると、この履行遅滞を理由として乙契約を民法第541条により解除できる場合がある。
解説:○・・・「屋内プールの完成及び併用に遅延」は、判決文の「社会通念上、甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合」に該当し、甲契約と併せて乙契約を解除できる場合があります。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。(民法541条より)
問10
問10 遺言に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 1 自筆証書遺言は、その内容をワープロ等で印字していても、日付と氏名を自書し、押印すれば、有効な遺言となる。
解説:×・・・自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(民法968条1項より)
- 2 疾病によって死亡の危急に迫った者が遺言をする場合には、代理人が2名以上の証人と一緒に公証人役場に行けば、公正証書遺言を有効に作成することができる。
解説:×・・・疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。(民法976条より)また、
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。(民法969条より)疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者の場合は、証人が3人必要です。
- 3 未成年であっても、15歳に達した者は、有効に遺言をすることができる。
解説:○・・・十五歳に達した者は、遺言をすることができる。(民法961条より)
- 4 夫婦又は血縁関係がある者は、同一の証書で有効に遺言をすることができる。
解説:×・・・遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。(民法975条より)